一般財団法人 日本環境衛生センター

アジア大気汚染研究センター

Asia Center for Air Pollution Research (ACAP)

2019.09.24 研究活動

第60回大気環境学会年会(2019年9月18日(水)~20日(金))において、アジア大気汚染研究センターの研究員が発表

第60回大気環境学会年会(2019年9月18日(水)~20日(金)、東京農工大学 府中キャンパス)において、アジア大気汚染研究センターの研究員が発表しました。発表概要は以下のとおりです。

学会名 60回大気環境学会年会
開催日 2019年918()20()
開催場所 東京農工大学 府中キャンパス

 

名前 演題 概要
箕浦宏明, 丹下健,  王丕维,  欧健 ディーゼル市バスの営業運行中のNOx real world emission 中国アモイ市で、営業中のディーゼル市バスに車載型NOx/PM計を使い、real world emissionを計測した。SCR制御が入りガス濃度で1000ppmを超えないと尿素噴射しない制御であることが分かった。繁華街や渋滞の発生する場所では、加減速の頻度が増し、平均車速が低下した。その結果、その場所での滞在時間が長くなり、時間あたりのNOx排出量の増加につながった。これら実走行に即したNOx排出量が推計できた。
桐山悠祐、黒川純一、佐藤啓市 衛星観測結果を用いた東南アジアのNH3変動解析 農業活動が活発であり、化石燃料消費による窒素酸化物や硫黄酸化物の排出が増加する東南アジア地域では、NH3の動態把握は大気質改善に重要だが、この地域のNH3の地表観測データは限定されており、実態把握が十分でない。一方で衛星によるNH3の観測結果が充実してきており、地上観測を補完できる状況が整ってきている。本研究では、東南アジアにおけるNH3の変動とその原因の解明を目的として、NH3の衛星観測結果を解析した。
黒川純一、弓本桂也、板橋秀一、永島達也、眞木貴史、大原利眞 排出量逆推計結果によるアジアを対象とした地域別NOx排出インベントリの評価 アジア域は世界で最も大気汚染物質を排出する地域となっているが、その空間・時間変動は複雑化してきている。本研究では、アジアのNOxを対象に、排出インベントリと衛星観測データを用いた排出量逆推計結果を地域別に比較し、排出実態とトレンドの地域差を評価する。また、排出インベントリと排出量逆推計結果との差異を解析し、現在の排出インベントリの課題点について議論する。
二見真理、弓場彬江、高橋良太、大泉毅、箕浦宏明 EANET湿性・乾性モニタリングにおける分析精度向上にむけた解析 EANETでは、測定分析担当機関を対象に測定精度の向上を目的として、模擬降水試料を用いた調査を実施しているが、大気汚染が改善するにつれ、用いる試料濃度も低下させている。調査は、1998年から21回実施されており、申請者の所属機関にてデータの解析が実施されている。精度管理目標に達しないデータは現状でも多数存在し、未だ改善の余地がある。本研究では、低濃度試料測定の精度向上へ向けたデータ解析に資する報告を行う。
弓場彬江、箕浦宏明 東アジアモニタリングネットワーク(EANET)国内遠隔地域局における高濃度事例の解析 日本国内の東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)で測定された汚染物質(オゾン、PM2.5など)について過去10年間に発生した汚染物質が高濃度となる事例をカーブフィット法より抽出し、その要因について流跡線解析より検討した。特に遠隔地域局の事例について解析し、影響を与える地域について発表する。
松谷亮,関川真也,水戸部英子,家合浩明(後ろ3名、新潟県保環研) 環境大気中のN-ニトロソアミン化合物分析法の検討 今まで分析法が確立されていなかった環境大気中のN-ニトロソアミン化合物の分析方法について検討したので報告する。測定方法の概要は以下のとおり。固相カートリッジに環境大気を通気させ、目的物質を捕集後、溶媒抽出し、高分解能GC/MSにて測定し、同定・定量を行う。検出限界や添加回収試験の結果のほか、カートリッジの検討結果や四重極型GC/MSと高分解能GC/MSの測定の比較等についても報告する。
佐瀬裕之、高橋正通、大泉毅、松田和秀 伊自良湖集水域における酸性化・窒素飽和と近年の回復 岐阜県伊自良湖集水域の酸性化・窒素飽和は、我が国における酸性雨影響の初めての事例とされている。近年は、酸性物質の沈着量の低下により、回復傾向も見られつつある。本講演では、1990年代に生じた酸性化・窒素飽和とその後の回復について、改めて、一連の事象を概観するとともに、そこから得られた知見と今後の酸性雨影響研究の展望を論じる。
高橋雅昭,佐々木博行,橋﨑光太郎,佐瀨裕之,大泉毅 SO2中の硫黄同位体分析手法の開発及び観測 ハイボリウムエアサンプラーとK2CO3含浸ろ紙を、一般環境における測定事例の少ないSO2の硫黄同位体比測定へ適用する手法について検討し、新潟市で観測を行った。SO2の硫黄同位体比は同時に捕集される粒子中に含まれる非海塩性硫酸イオンの硫黄同位体比より低いことがわかった。SO2は長距離輸送される間に酸化されるため、SO2の硫黄同位体比は観測地点に近い発生源からの影響を強く受けていることが示唆された。
佐藤啓市、高橋良太、大泉毅、弓場彬江、小竹祐佳、箕浦宏明、佐々木淳一、八木繁樹 日本海側遠隔、郊外測定局における標準測定法とPM2.5自動測定機との並行試験 環境大気常時監視マニュアル(第6版)に推奨されている、測定現場での標準測定法とPM2.5自動測定機との同時測定による一致性の確認試験を、日本海側の遠隔地点(竜飛岬)、郊外地点(新潟巻)で行った。通年データから両地点ともに等価性を有する結果となったが、冬季では標準測定法との偏差が大きくなり、等価性から外れるデータもいくつかみられた。風速、湿度等の気象要素と標準測定法との偏差の関係についても考察した。
高橋良太、大泉毅、佐藤啓市、高橋雅昭、中村久美子 EANETにおける分析機関間比較調査(降水)の解析結果について(第3報) 東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)では、QA/QC 活動の一環として1998 年から模擬降水を用いた分析機関間比較調査を毎年実施している。各参加分析機関の測定結果の評価にあたっては、模擬降水試料調製時の試薬使用量から算出した各分析項目値を用いているが、本研究では技能試験及び繰り返し再現性評価の国際規格であるISOに基づく評価も併せて行い、各評価指標での解析結果の比較検証を実施した。
山下研、仲田伸也 ウランバートルの大気汚染のリスク評価 モンゴルの首都、ウランバートルは燃料に主に質の良くない石炭を使用しているために、特に冬場の大量の燃料使用による大気汚染の状況は東アジアでも最も悪い状況である。CMAQ/REASでのPM2.5濃度の計算結果及びウランバートル市内で行われている大気汚染物質のモニタリング結果より、大気汚染の影響指標として、早期死亡数を推定した。さらに、モンゴルを対象に作成された最新のエミッションインベントリから、効果的な大気汚染物質の削減を、主に国内対策の観点から考察を行った。