第65回大気環境学会年会(2024年9月11日(水)~13日(金))、慶應義塾大学日吉キャンパス) において、アジア大気汚染研究センターの研究員が発表します。発表概要は以下のとおりです。
学会名 | 第65回大気環境学会年会 |
開催日 | 2024年9月11日(水)~13日(金) |
開催場所 | 慶應義塾大学日吉キャンパス (神奈川県横浜市港北区日吉4‒1‒1) |
名前 | 演題 | 概要 |
大原利眞,武藤洋介,黒川純一,嶋田知英,植松光夫 |
東京首都圏における長期モニタリングによるCO2排出削減の検出 |
CO2排出量削減は世界的課題であり、観測データに基づいて科学的に追跡・検証する必要がある。そこで2002~2020年の19年間に、首都圏の郊外域と山岳域の2地点で観測されたCO2濃度差の長期トレンドを人為起源CO2排出量の変化と比較した。その結果、両者のトレンドは整合しており、首都圏の人為起源CO2排出量が20年スケールで減少していることを明らかにした。 |
佐瀨裕之,Phuvasa CHANONMUANG,諸橋将雪,徐懋,松田和秀 | タイ熱帯乾燥林における葉面洗浄法による窒素乾性沈着の評価 | 熱帯の森林地域における窒素沈着の実態はまだ不明な点が多い。乾季・雨季が明確なタイ熱帯乾燥林において、葉面を純水で直接洗浄・抽出する方法を用いて、乾季の無降雨期間に沈着した窒素成分の評価を行った。硝酸イオンやアンモニウムイオンが比較的高い濃度で検出され、無降雨期間の乾性沈着を示唆した。今後タワー観測結果との比較も行う予定である。 |
佐藤啓市,霍銘群,弓場彬江,二見真理,Kim-Oanh Pham,高橋司,箕浦宏明,Ngoc Tran,藤井佑介,竹中規訓,To Thi Hien | 日本と東南アジア諸国におけるPM2.5有機成分組成の比較 | 日本と東南アジア諸国間のPM2.5発生源の違いを解明するために、2018~2022年に新潟、ホーチミン、バンコクで観測したPM2.5有機成分組成の比較を行った。バイオマス燃焼起源と関係づけられるレボグルコサンは、特に秋~冬の新潟で濃度が高くアジア大陸からの長距離輸送と関係付けられる。プラスチック燃焼起源、二次粒子起源と関係づけられるテレフタル酸濃度は、ホーチミン、バンコクの方が高く、ローカル発生源の影響を受けていると思われる。 |
黒川純一,桐山悠祐 | アジア域排出インベントリREASにおける自動車起源排出量推計手法の課題点 | アジア域排出インベントリREASの自動車起源排出量推計においては、登録台数と一台辺りの年間走行量(VKT)の推定値をベースとしており、燃料消費量を使用していないが、この場合、COVID-19時の様な、VKTが平年と大きく異なる場合に対応できない可能性がある。また、登録台数データにおいて、電気自動車と化石燃料自動車の区別がつけられない場合、排出量を過大に推計する危険性がある。本研究では、自動車起源排出量について、燃料消費量と燃費を使った試算を行い、登録台数とVKTを使ったREASの結果と比較評価し、その結果に基づいてREASの課題点について議論を行った。 |
Mingqun Huo, Keiichi Sato (霍銘群,佐藤啓市) |
Long-term trend of particulate carbonaceous components’ concentrations observed at Japanese sites (日本のサイトで観測された粒子状炭素成分濃度の長期的傾向) |
To evaluate the long-term trend of particulate components’ concentrations, the monitoring on the organic carbon, and elemental carbon was conducted at Niigata, Sado and Tokyo sites in Japan. (粒子状炭素成分濃度の長期的な傾向を評価するため、新潟、佐渡、東京の各地点で有機炭素(OC)と元素状炭素(EC)のモニタリング調査を行った。) |
弓場彬江,高橋克行,柴崎みはる,吉村有史,Kim-Oanh PHAM,佐藤啓市 | 常時監視およびEANET局のPM2.5データを用いた高濃度イベントの広域的・地域的な影響解析 | EANET新潟巻測定局を中心に、PM2.5高濃度時における大気汚染の影響範囲を周辺局のPM2.5と比較することで評価した。PM2.5が1日のみ高濃度となった場合、30%程度の確率で周辺測定局も高濃度となった一方、高濃度が複数日連続した場合、80%程度の確率で周辺局も高濃度となっていた。PM2.5高濃度時の局地的な影響について新潟巻の気象条件とPM2.5成分分析結果から解析した結果を発表した。 |
二見真理,弓場彬江,桐山悠祐,南波裕太,佐藤啓市,柴崎みはる,塩手文也 | 低コスト大気センサーの長期観測に向けたデータ解析 | 近年、大気常時監視で使用される公定法機器と比べて安価で点検が容易な低コストセンサー (Low-Cost Sensor : LCS)の利用が広まっているが、測定精度や特性を理解して利用することが重要である。本研究では、LCSの長期観測利用に向け、LCSと大型リファレンス機器との並行観測を行い、データ解析結果について報告した。 |
佐々木博行,髙橋司,二見真理,遠藤智美,平野瑞歩,小竹佑佳,Kim-Oanh PHAM | 顕微ラマン分光法による大気中マイクロプラスチックの調査手法の検討とその応用 | 大気中に浮遊するマイクロプラスチック(AMPs)の測定手法として、空間分解能の点で有利な顕微ラマン分光装置(顕微ラマン)を用いた手法を考案し、国内では初めて同手法によるフィールド調査を行った。期間を通じたAMPs個数濃度の平均値(n=32)は0.52±0.24 MPs m-3、種類はポリエチレン(PE)、プラスチック樹脂(RES)、ポリアミド(PA)の順に多く、粒径は7.6±3.7 µm、形状はいずれも粒子(顆粒)・破片状であり、本研究と類似の手法を用いた既往研究の報告と矛盾しなかった。この他、集中観測期間における地点毎の個数濃度の推移や、浮遊粒子状物質(PM)の各成分との相関等の結果に基づき議論を行った。 |
Kim-Oanh PHAM, Yayoi INOMATA, Tsukasa TAKAHASHI Keichi SATO |
Simultaneous determination of hydroxylated polycyclic aromatic hydrocarbons and biomass burning markers in particulate matter (粒子状物質中の水酸化多環芳香族炭化水素とバイオマス燃焼マーカーの同時定量) |
Hydroxylated polycyclic aromatic hydrocarbons (OH-PAHs) are infamous PAH metabolites in health research. While the toxicity of OH-PAHs has been a growing field in health research, little is known about the regional and seasonal variations of atmospheric OH-PAH concentrations. Due to low concentrations in the atmosphere and the limitation of analyzing methods, there are few research on atmospheric OH-PAHs. The atmospheric OH-PAH concentrations in a city in Western Japan increased over time from 2013 (2-OH-Flu: 0.062 pg m-3 and 1-OH-Pyr: 4.1 pg m-3) to 2018 (2-OH-Flu: 1.45 pg m-3 and 1-OH-Pyr: 5.53 pg m-3), leading to concern of unknown emission sources in Western Japan. OH-PAHs have been found to be major tracers in coal combustion and biomass burning, similar to their parent PAHs. To develop source profile for OH-PAHs, we examined the relationship between OH-PAHs and organic markers. (水酸化多環芳香族炭化水素(OH-PAHs)は、健康研究において有害性の高いPAHの代謝産物である。OH-PAHsの毒性は健康研究において成長分野であるが、大気中のOH-PAHs濃度の地域的・季節的変動についてはほとんど知られていない。大気中の濃度が低く、分析方法にも限界があるため、大気中のOH-PAHに関する研究はほとんど行われていない。西日本のある都市における大気中OH-PAH濃度は、2013年(2-OH-Flu:0.062 pg m-3、1-OH-Pyr:4.1 pg m-3)から2018年(2-OH-Flu:1.45 pg m-3、1-OH-Pyr:5.53 pg m-3)にかけて経時的に増加しており、西日本における未知の排出源が懸念される。OH-PAHsは、親PAHsと同様に、石炭燃焼やバイオマス燃焼における主要なトレーサーであることが判明している。OH-PAHsの発生源プロファイルを作成するために、OH-PAHsと有機マーカーの関係を調べた。) |