一般財団法人 日本環境衛生センター

アジア大気汚染研究センター

Asia Center for Air Pollution Research (ACAP)

 

東アジアにおける大気汚染と樹木や森林の衰退に関するレビュー(2015~2020年)

 

土壌・植生モニタリングタスクフォースでは「酸性物質・関連化学物質による農作物、森林及び陸水に対する影響のモニタリングに関するEANETの将来方向性についての戦略ペーパー」に基づき、科学的評価や研究活動を行っています。

その活動の一環として、地域内の森林衰退の状況と大気汚染の関連性について、日本、中国、ロシア、及びマレーシアのタスクフォースメンバーが中心となり、各国における科学論文を基に科学レビューがまとめられました。これによると、北東アジアの各国で大気汚染と関連づけられる樹木や森林の衰退が工業化とともに確認されており、その原因は時代によって変遷してきました。すなわち、当初はSO2による直接影響が主なものでしたが、次に酸性化や窒素沈着、さらにオゾンや粒子状物質(PM)、気候変動との相互作用によるものへと変わってきています。熱帯林や北方樹林では森林火災によるヘイズ(煙霧)が増加しており、放出されるPMは光合成を阻害します。

近年は、慢性的に高いオゾン濃度が気候変動と併せて樹木の生理に悪影響を与えていると考えられます。気候変動下においては大気汚染の樹木衰退への影響は明確ではありませんが、大気汚染のモニタリングは樹木衰退の原因を特定する上で重要です。東南アジアではさらなる経済発展が見込まれますので、モニタリングネットワークを熱帯林や北方樹林に拡大していくことも提案されています。都市樹木や田園地域の林分の回復のような対策も、将来的な生態系サービスを確かなものにする上で重要であることが指摘されています。

本研究は、EANETタスクフォース活動の一環として実施され、科研費(JP19H00955)の支援を受けました。また、ロシアの研究に関しては、ロシア基礎研究基金とイルクーツク地域政府(03- 04-49565, 05-04-97219, 05-05-97259, 12-04-31036)、ロシア科学アカデミーシベリア支部(14-44-04067, 及びバイカル分析センターの機器利用にあたっては統合プロジェクト(17)の支援を受けました。

本研究に関連した発表論文は以下のとおり。