一般財団法人 日本環境衛生センター

アジア大気汚染研究センター

Asia Center for Air Pollution Research (ACAP)

 

国設新潟巻酸性雨測定所における研究 (2000年〜)

PM2.5の化学的特徴及び発生源寄与度、北東アジアから新潟までの長距離輸送

2015年5月から2017年2月までの期間の四季において、国設新潟巻酸性雨測定所で2週間にわたって季節別集中サンプリングを行いました。

観測期間中のPM2.5の1日平均濃度は4.2µg m-3から33.4μg m-3で日本のPM2.5の環境基準(35μg m-3)よりも低い濃度で、PM2.5の成分分析の結果、高濃度の硫酸イオン(SO42-)、アンモニウムイオン(NH4 +)及び有機炭素(OC)が、春と夏に観測され、光化学反応と二次OC生成により引き起こされたものと考えられました。

PM 2.5の主要な化学成分は、SO42-、硝酸イオン(NO3-)、NH4 +、有機炭素物質(OCM)、元素状炭素(EC)、及び土壌由来元素であり、他の都市部のデータと比較して、ECとNO3-の濃度は低く、高いOC/EC比が観測されました。これは、測定所近隣に固定発生源がほとんど無く、交通量が少ない農村部であることに起因しているものと考えられました。

PM2.5の発生源を推定するため、Positive Matrix Factorization(PMF)モデル解析を行った結果、PM2.5の発生源寄与度の高い主要な発生源として、海塩(10.2%)、バイオマス燃焼(18.9%)、土壌粒子(13.2%)および二次生成エアロゾル(44.4%)の4因子が検出されました。またPotential Source Contribution Function(PSCF)解析の結果、二次生成エアロゾルと海塩の主な発生源が日本南西部の国内と日本海であることが示唆され、バイオマス燃焼と土壌粒子の発生源については、特定の季節において、北東アジア大陸から長距離輸送されたものであることが示唆されました。

以上の結果を西日本における先行研究と比較すると、本研究における二次生成エアロゾルについては、南西日本の国内寄与が大きいことを示していましたが、先行研究では、東北アジア大陸からの寄与が大きいことが報告されています。一方、バイオマス燃焼の寄与は、秋季では中国北東部、その他の季節では、新潟の農村部と南西日本からの寄与が大きいという独特的な発生源寄与を示していることが本研究で示唆されました。

本研究は、日本学術振興会 科研費 (No. 25502005) 及び環境省環境研究総合推進費 (5-1306)の支援のもとに実施されたものです。

本研究に関連した発表論文は以下のとおり。