アジア大気汚染研究センター(佐瀨裕之、大泉毅、諸橋将雪)、新潟県(齋藤辰善、高橋雅昭)、森林総合研究所(山下尚之)、金沢大学(猪股弥生)、新潟大学(中田誠)からなる研究グループによる、日本海側に設置した森林集水域(加治川試験地)での16年以上の長期観測と、環境省によるモニタリングデータの解析から、日本の森林集水域が大気汚染に鋭敏に反応していることが分かりました。
- 中国における二酸化硫黄(SO2)の排出量を反映して、加治川試験地における大気沈着による硫黄(S)の流入量は2006/2007年頃から低下を始めました。
- 加治川試験地を含む日本の森林地域の陸水(湖沼など)は、大気からのSの流入に鋭敏に応答し、硫酸イオン(SO42–)濃度が低下し、酸性化から回復を始めました。
- 気候変動が酸性化からの回復を遅らせる可能性があるため、今後も生態系でのSの挙動は重要です。
- 河川の硝酸イオン(NO3–)の濃度は上昇しており、窒素の沈着や樹木の成長による吸収の重要性が高まってきました。
これらの結果は、大気環境に関する国際学術誌であるAtmospheric Environmentに出版されました。
Sase et al. 2021. Transboundary air pollution reduction rapidly reflected in stream water chemistry in forested catchment on the Sea of Japan coast in central Japan. Atmospheric Environment, in Press.
この研究はEANETのネットワークセンター研究として実施され、用いられたデータの一部は、環境省越境大気汚染・酸性雨長期モニタリングで得られたものです。また、この研究は、アジア太平洋気候変動研究ネットワーク(ARCP2012‐18NMY‐Sase; ARCP2013‐13CMY‐Sase) 、日本学術振興会の科研費研究JP19H00955, JP19K12315 及びJP18K11616の支援を受けました。
リンク
以下のリンクから論文全文をダウンロードすることが可能です(オープンアクセス)。
https://doi.org/10.1016/j.atmosenv.2021.118223
これまでの加治川試験地や関連集水域サイトにおける研究成果は以下から参照可能です。
https://www.acap.asia/research-main/catchment_kaji-ijira/
加治川試験地及び伊自良湖モニタリングサイトにおける集水域研究