アジア大気汚染研究センターでは東アジアにおける酸性雨・大気汚染のモニタリングやこれに係る研究を続けています。この度同センター生態影響研究部の佐瀨裕之部長が公益社団法人大気環境学会より9月14日~9月16日に大阪府堺市の大阪公立大学で開催された同学会年会において「我が国及び東アジアの大気環境と森林生態系影響に関する研究」で学術賞を授与されました。
昨年度にも情報管理部の大泉毅部長が「硫黄同位体比観測による大気汚染物質の越境輸送に関する研究」で同学会学会賞学術賞を授与されており、当センターの職員が2年連続で受賞したことになります。20名程度の少人数の研究員で構成される当センターのような小規模の研究施設から2年連続で学会賞が授与されることはきわめて珍しいことであり、またきわめて名誉なことです。
両名とも長年にわたって東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)の業務と研究に従事しており、そこでの研究成果も重要な受賞理由です。これまでEANET事業を進めてこられた環境省、また当センターの活動を支援された日本環境衛生センター本部に深甚なる感謝をこめ、後続が輩出されんことを祈念してここにご報告申し上げます。
アジア大気汚染研究センター 所長 畠山史郎
受賞者よりひとこと
「我が国及び東アジアの大気環境と森林生態系影響に関する研究」
佐瀨裕之
この度は、身に余る栄誉を頂戴し、大変光栄に存じます。
私は、修士論文・博士論文の研究を国立環境研究所でご指導いただき、1998年に学位取得と同時に、東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)のネットワークセンターである酸性雨研究センター(現在のアジア大気汚染研究センター)に創立スタッフとして採用されました。それ以来、日本、モンゴル、タイ、マレーシア、ロシア等のEANET参加国において、「酸性雨」をキーワードとした大気環境と森林生態系影響に関する研究に、継続して携わることができました。皆さまにご支援いただいたこれらの研究が今回の受賞に繋がりました。厚く御礼申し上げます。
今後も、東アジアにおける大気環境科学の発展やそれに基づく環境施策に貢献できるよう、モニタリングネットワークと大気環境研究の連携を推進するとともに、変動する大気環境への森林生態系の応答を解析していきたいと考えています。
「硫黄同位体比観測による大気汚染物質の越境輸送に関する研究」
大泉毅
新潟県公害研究所(現、新潟県保健環境科学研究所)に採用されて40年、様々な立場で大気環境に係る調査研究に携わってきました。研究所では県内初の酸性雨全県調査に関わらせていただき、流跡線解析、フッ素やセレンの観測を通じて日本海側地域での越境汚染を認識し、硫黄同位体比を用いた研究に傾倒しました。この間、酸性雨研究センター(現、アジア大気汚染研究センター)へ、3回に渡って計14年間お世話になり、越境汚染の発生源地域への訪問等を通じて多様な現実に触れることが出来ました。今後は長年の身勝手な生活の借りを少しでも家族に返したいと思っています。お世話になった皆様方には、これまでのご高配に感謝いたしますとともに、アジア大気汚染研究センターおよび新潟県保健環境科学研究所の活動に一層のご理解、ご支援をいただきますようお願いいたします。
ACAPの大気環境学会学会賞受賞者一覧
受賞者氏名: | 佐瀨 裕之 |
賞の名称: | 学術賞 |
受賞年月日: | 2022年9月15日 |
受賞対象: | 我が国及び東アジアの大気環境と森林生態系影響に関する研究(受賞記念講演要旨) |
受賞者氏名: | 大泉 毅 |
賞の名称: | 学術賞 |
受賞年月日: | 2021年9月16日 |
受賞対象: | 硫黄同位体比観測による大気汚染物質の越境輸送に関する研究(受賞記念講演要旨) |
受賞者氏名: | 黒川 純一 |
賞の名称: | 進歩賞 |
受賞年月日: | 2013年9月19日 |
受賞対象: | アジアにおける排出インベントリに関する研究(受賞記念講演要旨) |
本受賞に関するEANET事務局のNewsはこちらよりご覧ください(英語のみ)。